[ トピックス ]
(2017/7/26 05:00)
■まず「アジア」地の利生かす/4万キロワットの試験設備新設 独2社に迫る
神戸製鋼所は大型ターボ圧縮機の製造に参入し、世界市場に打って出る。このほど高砂製作所(兵庫県高砂市)で世界最大級の4万キロワットの能力を有する試験運転設備を稼働した。大型ターボ圧縮機はドイツ2社がシェアを独占しており、神鋼は第3極として寡占2社に迫る。地の利があるアジア圏への提案を強め、欧米や中近東の企業にも展開。2020年度の圧縮機事業売上高は17年度計画比40%以上となる1300億円に増やす方針だ。(神戸・川合良典)
「ターボ式を中心に大型圧縮機の需要は高まっている」と、機械事業部門を担当する山口貢副社長は言い切る。神鋼はターボ式のほか、スクリュー式とレシプロ式の3種類の設計・製作を手がける圧縮機の総合メーカーだ。圧縮機は小型の汎用品から非汎用と呼ばれる大型品までサイズもさまざま。高砂製作所では大型を、小型の汎用品は播磨工場(兵庫県播磨町)で生産している。
80億円を投じて新設した試運転設備は、4万キロワットの可変速モーターを備え、同じ出力の圧縮機を試運転することができる世界最大級の設備だ。これまでの試験設備では最大2万キロワットまでの試運転しかできなかったが、より大型のテストが可能になり、世界の大型ターボ圧縮機市場への進出準備が整った。
中でも神鋼が注力するのは増速機内蔵型ターボ圧縮機。モーターで「インペラ」と呼ばれる羽根車を回し、空気を圧縮して供給するタイプだ。主流の一軸型ターボ圧縮機と比べて、エネルギー効率や省スペース化で優位性があるとされ、高炉の空気分離過程や石油化学プラントなどで使われる。
神鋼の圧縮機の歴史は100年以上と古く、国産初のレシプロ式圧縮機を製造して以来、スクリュー式やターボ式に技術を展開してきた。ターボ圧縮機は1966年に製造開始。これまで合計1500台以上の納入実績がある。
大型圧縮機市場は独シーメンスと独マン・ディーゼル・アンド・ターボが独占しているが、2万キロワットの製品を手がけてきた経験から「ドイツメーカー2社と比べても性能差はイーブン」(山口副社長)と自信をみせる。寡占2社に対しては「価格競争を仕掛ける」(同)方針だ。独2社は欧州で生産しており、高砂製作所は欧州圏以外では初の大型ターボ圧縮機生産拠点となる。大型の機器であることから輸送費がかさみ、アジア市場に向けては安価に提供することが可能になる。
6月には大型圧縮機事業のサポートサービスの新会社をフィリピンに設立。米国と中国に続く3拠点目で、アジア・オセアニア地域で販売や導入支援、アフターサービスを手がける。エンジニアと専門家の数は、20年度には17年度比50%増の100人とする方針だ。
現在最も大きな市場は欧州だが「有望なのは中国」(同)とシェア獲得に意欲をみせる。地の利が生かせるアジア圏から、グローバル市場へ販売攻勢をかける。
(2017/7/26 05:00)