[ オピニオン ]
(2017/10/3 05:00)
総選挙後の政権には、景気回復の実感に乏しい家計に配慮した施策の実行を求めたい。いざなぎ景気を超え、戦後2番目とみられる現在の景気拡張をさらに長期化させるには、企業の収益改善を家計に波及させる政策の後押しが欠かせない。
日銀が2日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業・製造業の業況判断指数はプラス22と4四半期連続で改善した。海外景気の回復を受け、リーマン・ショック前の2007年9月以来、10年ぶりの高水準だった。
だが安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が目指す「経済の好循環」が十分に回っていない。大胆な金融緩和により企業収益と雇用情勢は大幅に改善したが、個人消費の回復力は依然鈍く、日銀が目指す2%の物価上昇の達成は見通せない。本来なら賃金高騰、物価上昇、金融引き締めへと舵を切るはずのシナリオが描けずにいる。
財務省の法人企業統計によると、全規模・全産業の16年度の経常利益は、第2次安倍政権が発足した12年度と比べて1・5倍以上に増えた。ただ人件費は同2・5%増と賃上げの動きは年々緩慢になり、14年に始まった“官民春闘”も曲がり角を迎えている。
設備投資も同20%台の伸び率にとどまり、大幅な増益が賃上げや投資に十分に反映されていない。結果、内部留保は16年度に460兆6122億円と過去最高を更新している。
政権には賃上げと投資を促す効果的な施策を求めたい。18年度税制改正で検討する優遇措置はもとより、臨時国会解散で審議が先送られた働き方改革関連法案の早期成立を目指し、賃金の底上げにつながる同一労働同一賃金などの実現を急ぎたい。
また日本の低い潜在成長率を引き上げる生産性革命や人づくり革命を積極推進し、企業が賃上げや設備投資に動きやすい機運を醸成することも肝要だ。
企業は政府・与党内にくすぶる「内部留保課税」などの極論を封印するためにも、家計に配慮した利益配分を再考することが期待される。
(2017/10/3 05:00)