[ オピニオン ]
(2017/12/18 05:00)
「和をもって貴しとなす」。物事を進める場合、カドを立てず仲良く協調することが大事という意味で、よく知られた言葉だ。座右の銘にしている人も多い
聖徳太子が作った十七条憲法の第1条の冒頭に出てくることでも知られる。太子は単に仲良くということではなく、道理を正しく見いだすために党派、派閥的なこだわりを捨てるよう説いているという。
政府が経済界に賃上げを要請する「官製春闘」が5年目を迎える。業績のばらつきや賃上げの息切れも懸念されている。賃上げは本来、企業側が従業員のことを考えて決めるべきこと。しかし、あえて口をはさむには訳があろう。
企業の内部留保は今年3月末で400兆円を超える。この潤沢な資金を賃上げあるいは設備投資に回せば、デフレ脱却や景気の後押しにつながると考えても不思議ではない。
日本では企業も「和をもって貴しとなす」考えが根強い。その結果、欧米企業に比べて競争意識が弱く、新規投資にも積極的とはいえない。政府は賃上げに口を出すのではなく、投資環境の整備を急ぐべきだ。企業は「和をもって」の精神で従業員に賃上げで応えるか、「和」を横に置いて投資を積極化するか、独自の企業行動を進めてほしい。
(2017/12/18 05:00)