[ オピニオン ]
(2019/2/8 05:00)
政府は国際捕鯨取締条約から脱退し、7月から商業捕鯨を再開する。同条約に基づく国際捕鯨委員会(IWC)での商業捕鯨に関する議論は、クジラは保護すべき動物という意見と、資源量を確保しながら捕鯨文化を守るという立場が対立する構図が続いた。30年以上にわたり捕鯨再開を求める主張を真っ向から否定し続けた結果が、日本を離脱に向かわせた。このまま議論の余地がない状況が今後も続けば、日本のように背を向ける国が出ないとも限らない。
IWCは本来、資源の保護と捕鯨産業の発展を目的として設立。ただ1982年に商業捕鯨を禁止した商業捕鯨モラトリアムを決めた。これに対し、日本は科学的根拠に基づいて捕鯨再開を求めてきた。反捕鯨支持国が多くを占めるIWCでは日本の提案は否決され続けた。2018年9月のIWC総会で捕鯨支持の議論を両立させる改革案と商業捕鯨再開を提案したがこれも否決。政府はIWCに持続的利用の意見を共存させる余地はないとし脱退に踏み切った。
日本は7月以降、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)内で商業捕鯨を始める。対象はミンククジラなどとしこれまで実施してきた調査捕鯨は終了し、南極海・南半球では捕獲しない。捕獲枠はIWCで採択された方式で算出される枠内で設定する。これに対し反捕鯨支持国からの非難の声は高まりそうだ。
欧米の反捕鯨支持の国々はクジラを特別な存在とし保護を主張している。一方の日本のようにクジラを食料としてきた国は、他の魚類と同様に漁獲枠を設定し資源量を確保して持続的に捕獲する正当性を訴える。両者の議論には感情論が入り交じり、解決の糸口は見えない。
ただ、日本は条約脱退後もIWCにオブザーバーとして残り、クジラの資源量調査を継続しながら、捕鯨支持の議論を続ける。日本が国際条約から脱退するのは異例とされるが、オブザーバーとしてIWCの説得を続けるという姿勢は好ましい。30年以上も調査捕鯨のみに制限されたクジラが食卓で歓迎される日は近いのだろうか。
(2019/2/8 05:00)