(2020/5/14 05:00)
HDD(ハードディスク装置)の新商品発表を目にする機会が、めっきり減った。世界的な再編でメーカーが集約されたせいもあるが、それ以上に技術進歩のスピードが落ちているからだ。
過去に年率数十%という驚異的なHDDの容量拡大を主導してきたのは、ノーベル賞を受賞したGMR(巨大磁気抵抗)技術。だが、それも限界に達した。加えてパソコンなどの主記憶装置が急速にSSD(半導体ドライブ)に移行している。
同じITでも、高速通信は急速な進歩が続いている。第5世代通信(5G)は現代の社会変革の先導役だ。高速演算は半導体チップの微細化こそ鈍化したものの、それを補う複数コアの並列運用によって能力向上が続く。
かつては大容量記憶もこの隊列に伍(ご)した能力向上の花形。HDDは部品から完成品まで多くの日本企業の業績を押し上げた。それが、いまや地味な存在になってしまった。
しかし「HDDが斜陽になったわけではない」と消息筋。パソコン搭載の縮小で数は減ったが、データセンター向けは好調で、容量ベースで見ると増えている。技術的な伸びが減速すると陳腐化に直結しやすいIT関連機器だが、成熟してなお成長するHDDは珍しい例なのだそうだ。
(2020/5/14 05:00)