(2023/1/16 05:00)
13日(現地時間)に米ワシントンで開かれた日米首脳会談は、日本の防衛政策の転換をバイデン米大統領が歓迎し、反撃能力の運用などで同盟を深化させることで合意した。緊迫化する東アジアの安全保障の確保に向け、日本が改定した安全保障関連3文書を効果的に運用し、対中抑止力を高めたい。他方、防衛政策の転換や防衛費の相当な増額は国民的議論が行われないまま決定された。23日召集の通常国会では防衛政策の審議を尽くしつつ、緊張緩和に向けた対中外交にも目を配りたい。
日米首脳会談は、11日に開かれた日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)での決定事項を確認。日本は防衛費の大幅増額と反撃能力の装備を説明し、米国は強い支持を表明した。
日米は中国を「最大の戦略的挑戦」と位置付け、南西諸島で日米による共同演習などを拡充するほか、米国は沖縄の海兵隊を再編し、海兵沿岸連隊を組織して離島を防衛することも決めた。日米は陸、海、空、宇宙、サイバー領域での同盟強化を進め、宇宙空間では中ロによる日本の衛星への攻撃を米国も防衛する。日米の拡大抑止の対象が広がり、東アジアの緊張緩和につながると期待したい。
日米首脳会談では中ロを念頭に、半導体やエネルギーなどの供給網の再編に向け、日米が主導的な役割を果たすことでも合意した。米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」などによる中国包囲網を想定しているようだ。
ただ中国は世界経済に深く溶け込み、非安保分野ではむしろ関係を拡大したい。今春には日中防衛当局間でホットラインの運用も始まる。意思疎通の継続により「対立と協力」の関係を築き、最悪の事態を回避することは防衛力増強と同程度、あるいはそれ以上に求められる。
防衛政策の転換と防衛費の大幅増、さらに財源確保など、国民の理解を得なければならない課題が日本政府に山積する。先進7カ国(G7)議長国として国際秩序の再構築を目指す以前に、政権の責務として国民への説明責任も果たしてほしい。
(2023/1/16 05:00)