(2023/10/11 12:00)
秋の祭典ハロウィーンが「トリック・オア・トリート」のかけ声とともに日本に根付いて久しい。本場米国においても2023年のハロウィーン関連支出額は過去最高の約1・8兆円と予想されており、盛況だ(全米小売業協会、NRF)。他方、年間の甘味消費の一角を占める一大イベントであることから、昨今の粗糖価格の高騰にあえいでいるとの声もある。サプライチェーン・マネジメント(SCM)の観点より考察してみたい。
ハロウィーンは元々欧州の風習だという。しかし仮装した子どもたちが近所の家を訪ねて回り、トリート(甘味)をねだる定番のフォーマットは米国で普及・定着した。日本に根付いたのも米国流のハロウィーンだ。
ハロウィーンを子どもにトリート=モノを届けるためのサプライチェーン(供給網)とみなした場合、主原料である粗糖の国際取引価格の高騰は盛況に水を差す要因となる。折からのエルニーニョ現象によるサトウキビの凶作への危惧が旺盛な需要を生み、粗糖の価格上昇に拍車をかけているという(農畜産業振興機構調べ)。また、粗糖生産国側では原油価格の上昇を背景として粗糖をガソリン代替のバイオエタノールの原料として優先的に用いる誘因があることも考慮する必要があるだろう。日本国内の砂糖の価格も粗糖の国際価格上昇に連動する形で値上がりしている状況だ。
他方、ハロウィーンは仮装した姿をエンターテインメントとして披露する場でもある。いわばサービスのサプライチェーンとしての側面を持つ。NRFの調べによれば米国のハロウィーン関連支出の約34%を衣装代が占める。これはトリートの30%を上回る数字だ。加えて近時は大人向けのハロウィーン衣装が3000億円規模の市場を形成しているという。産業としてのハロウィーンは仮装した子どもが大人に菓子をねだる古典的なフォーマットから変容(トランスフォーム)しつつあるといえるだろう。
SCMの対象はモノのサプライチェーンに限られない。何を主要な価値として提供するシステムなのか、という点を適切に見抜くこともまたSCMの要諦なのである。
◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当
(2023/10/11 12:00)
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