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(2023/11/27 05:00)
発見の後に“産みの苦しみ”
(総合1から続く)食品や化粧品、日用品などの分野で成果がフレンドリーに分かりやすい研究がしたいと思い、カルビーに入社を希望しました。それ以前は高校で有機化学に興味を持ち、青山学院大学大学院で有機合成化学を学びました。有機化学は構造で説明ができるところが好きです。修士では金属錯体をつくり、触媒反応を促進する研究をしました。本来なら製薬会社などに進むところなのですが、成果が伝わる研究にチャレンジしたくなりました。
ただ、研究職ではなく総合職での入社でした。その後、社内で「未利用資源の有効活用」をテーマに研究分野の募集があり、自ら手を挙げて意思表示しました。ポテトチップス製造ではジャガイモの皮のロスがたくさん出ます。その中から機能成分を探索する研究です。
それから6年もの“修行”が始まりました。共同研究する大学や民間研究所などで、機能を発見するための実験を重ねました。この基礎研究の成果としてヒトの皮膚に良い成分の植物性セラミドがあることが分かりました。コメやコンニャクなどから抽出できるセラミドにはない、コラーゲンを合成する力があるのが特徴です。時間は掛かりましたが、機能を発見できて本当にうれしかったです。
今度は会社に戻って製品化に取り組みました。この製品化の研究がさらなる“産みの苦しみ”でした。社内の商品開発やマーケティングなどと協力して、セラミドの大規模抽出法やコスト低減などの課題に取り組みました。途中でストップしそうになることが何度もあり、やっと目標のスペックに到達し、製品化にめどを付けました。今の気持ちを3年前の苦しんでいた自分に伝えたいと感じます。
休日にはカラオケで歌ったりするほか、情報を調べて美容クリニックに通ったりするなど自分に投資することが好きです。(文=編集委員・井上雅太郎、写真=森住貴弘)
◇カルビー 研究開発本部研究部機能研究課 須藤麻里(すとう・まり)さん
(2023/11/27 05:00)