使用済みポリスチレンを年3000トンリサイクル デンカ 千葉工場

(2024/5/29 12:00)

  • デンカ千葉工場内に新設したポリスチレンのケミカルリサイクルプラント

デンカは千葉工場(千葉県市原市)に食品容器やシートなどに使われるポリスチレン(PS)のケミカルリサイクルプラントを建設した。処理能力が年間3000トン規模のリサイクルプラントで、工場端材などを再生する。PSは現行のリサイクル方法では用途などの課題があり、多くが焼却・熱回収されている。市中から発生する使用済みPSの受け入れも目指しており、循環型社会の実現に貢献する。

リサイクルプラントには米アジリックス(オレゴン州)の熱分解技術をライセンス導入した。使用済みPSを高温で熱分解、精製するなどして化学原料のスチレンモノマーに戻す。そのスチレンモノマーを再度重合することで、新品同等の品質・物性の再生PSを得られる仕組みだ。投入量に対し約半分のスチレンモノマーを得られ、不純物の有効活用も行う。二酸化炭素(CO2)排出量は単純焼却と比べて約40%削減が期待できるという。

  • デンカはPSなどのスチレン系樹脂を手がけ、グループ内や協力工場などから端材を回収する

現在、PSは白色食品トレーなどのマテリアルリサイクルが行われているが、再生材を直接食品に触れる用途に使えないなどの制約がある。モノマー化によるケミカルリサイクルは再生材を新品同等の品質に戻せるため、用途にかかわらず利用できることが特徴だ。

国内では同業他社が実証設備を稼働させるなど、PSメーカーの間でケミカルリサイクル推進の機運が高まっている。ただ、年3000トン規模の設備は国内に前例がなく、デンカは業界に先駆けて社会実装に挑む。デンカ千葉工場の山口徳幸次長は「運用ノウハウを蓄積しながら操業度を上げ、2026年度のフル稼働を目指す」と展望を語る。

資源循環の実現にはリサイクル技術の実装に加え、回収を含めた社会全体の仕組み作りが求められる。千葉工場では当面、食品容器やシートなどの工場端材を用いたリサイクルを行う計画だが、将来は納豆や乳酸菌飲料の容器など単一素材のものを中心に、市中から生じる廃棄PSの受け入れを視野に入れる。

市原市などと連携し、消費者から効率的にPSを回収するための仕組みの構築を目指す。「回収スキームの構築は重要な課題。工場端材など産業由来から始めた後、一般消費者からの受け入れを目指す。自治体などと連携しながら検討したい」(山口次長)と先を見据える。PSリサイクルの可能性を先駆けて示し、資源循環への貢献を目指す。

(2024/5/29 12:00)

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