(2024/6/12 05:00)
先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が13―15日、イタリア・プーリア州で開かれる。経済制裁で凍結しているロシア資産について、ウクライナ支援への活用で合意できるかが焦点になる。11月の米大統領選を前に合意することに意味があり、G7は結束して効果的な資産活用策を打ち出してほしい。
他方、ロシアへの経済制裁の抜け道となっている中国は、電気自動車(EV)や太陽光パネルの過剰生産が問題視され、台湾海峡の安全保障も脅かす。G7は対中国や中東情勢でも強い結束を世界に示してほしい。
ロシア中央銀行の資産約3000億ドル(約47兆円)が凍結されている。欧州連合(EU)はG7サミットに先立つ5月、凍結資産の運用益(利子)年30億ユーロ(約5000億円)をウクライナ軍事支援などに充てる活用策で先行合意。米国も将来の運用益を担保に500億ドル(約8兆円)を融資する案などをまとめた。国際法を考慮し、凍結資産を没収しない点で米欧は共通する。ウクライナのゼレンスキー大統領も出席する今サミットで合意に至ると期待したい。
欧州議会選で右派を躍進させた「自国第一主義」は、米大統領選でも懸念の一つだ。欧州の不協和音と「もしトラ」がウクライナ支援を後退させかねず、凍結資産の活用は今から道筋を付けておく必要がある。
中国はロシアへの経済制裁の抜け道となり、2023年の中ロの貿易総額は前年比26%増の約2400億ドル(約37兆円)と過去最高を更新した。軍事支援も指摘される。G7はロシア軍需産業と取引する中国の金融機関に制裁を科すなど対策を講じたい。新総統が就任した台湾への威嚇も続いており、G7は台湾海峡の平和と安定の重要性も世界に発信する必要がある。
中国は政府の補助金でEVなどを過剰生産し、廉価な製品が公正な競争を阻害している。米国は8月から対中制裁関税を大幅に引き上げるが、米大統領選が見え隠れする。貿易摩擦は世界貿易機関(WTO)で解決するのが筋であり、G7は正攻法で対中問題に臨んでほしい。
(2024/6/12 05:00)