インタビュー/長谷工コーポレーション・参与 片岡智氏 構造設計で人の命守る

(2024/7/23 12:00)

―これまでの仕事内容を教えてください。

「新入社員としてマンション建設の現場を1年経験した後、構造設計を志望し設計部に異動した。自社マンションの設計に始まり、電算ビルやエネルギーセンター、商業施設などさまざまな建築の設計に携わり、貴重な経験を重ねられた」

―現在の仕事内容は。

「設計部門エンジニアリング事業部のエグゼクティブエンジニアとして提案やアドバイスなどを行っている。プロジェクトの進捗(しんちょく)状況の報告を受け、もっと力を入れるべきだと判断した場合は背中を押し、危険を察知したらブレーキをかける役割もある」

―これまでで特に印象深い出来事は。

「1995年に発生した阪神・淡路大震災だ。マンションの傾きや高速道路の倒壊などの発生に大きな衝撃を受けた。私も現地に行き、建物の被災度診断や管理組合への説明などを行った」

「建物を倒壊させない、人の命を絶対に守らなければならないといった当たり前のことをあらためて強く意識した。構造設計に携わる者として一番大切なものは何かを問い直し、決意を新たにした」

―モチベーションを保つ秘訣(ひけつ)は。

「デザインを考える意匠設計とは異なり、構造設計の対象となる躯体(くたい)部分は目立たない。また多くの場合、目立たない方が美しい建物とされる。だがマンション建築でいえば人の命を守る器をつくる仕事であり、建物の安全・安心を確保するためには決して妥協できない領域がある。設計者としての良心や執念を持つことが大切で、モチベーション維持にもつながる」

―後輩に伝えたいことは。

「縁の下の力持ちとして喜びや、やりがいを感じられるかが、構造設計者の大切な資質であり素養となる。一方、構造体自体が優れたデザインとなっている建物もある。若い人たちが自信や誇りを持てるように、こうした魅力も伝えていきたい」

【略歴】80年(昭55)長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。一貫して構造設計関連業務に従事。エンジニアリング事業部構造設計室長、統括室長、理事副事業部長を経て、現在は同部門参与。68歳。

(2024/7/23 12:00)

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