製造現場のDX急ぐ 三菱電機・伊丹製作所

(2024/7/24 12:00)

インバーターを効率組み立て

  • 三菱電機伊丹製作所に導入したAGV

鉄道車両のモーターやインバーターなどを手がける三菱電機の伊丹製作所(兵庫県尼崎市)が製造現場のデジタル変革(DX)を急いでいる。部材を組み立てる製造現場に無人搬送車(AGV)を1台導入し、100キログラム近い部材を自動で搬送できるようにした。数人がかりの作業を代替できる上、人が台車で運ぶより安全という。インバーターの製造は手作業が中心だ。DXによる作業者の負担軽減が欠かせない。

鉄道車両のインバーターは直流電流を交流電流に変換し、モーターに供給する装置。三菱電機はモーターや乗客向けの映像表示装置なども手がけ、鉄道車両機器で累計約9万3600両分の受注実績がある。

インバーター製造ではパワー半導体などを組み込んだ部材を制御装置に組み立てる。工場3階の倉庫にある部材を4階の作業スペースに運んだり、空になった運搬用の箱を4階から3階に戻したりする作業をこれまでは人力で行っていた。

重い台車を運ぶため転倒などの危険がある上、一度の運搬に15分ほどかかるという手間の問題もあった。

部材入りの箱を載せた台車はAGV上に固定して運ぶ。人が行き来する通路を通るため移動速度は時速3キロ―4キロメートル程度に抑制。移動中に人などの接近を検知すると、その場に止まる設定もしている。こうした取り組みで安全性を高めた。

今後は部材だけでなく完成品も運べるように、他の階をまたいだ導線などを整える。2026年度にはさらに1台を導入する計画だ。「モノを運ぶだけでなく情報も集めて連携し、DXにつなげたい」(伊丹製作所車両制御システム部)とする。

  • 組み立てや試験、荷渡しの進捗を一元的に把握できるシステムを導入した

効率化の取り組みは他にもある。工場1階はインバーターの全部材を組み立て、完成品にする作業スペースだ。試験や荷渡しの状況も把握しながら仕上げなければならないため、複数案件の進捗(しんちょく)や工程がひと目で分かるシステムを導入した。

管理に必要な情報は各現場に置いたタブレット端末を通じて作業者が入力する。以前は「朝一番でホワイトボードに進捗を手書きし、共有していた」(同)ため、リアルタイムの詳細な把握が難しかった。システム導入により工数や人員の最適化がしやすくなった。

部品レベルで進捗を管理できるシステムも取り入れ、一層の見える化が進んだ。現場の要望を反映したこれらのDXが、作業者の負担軽減に一役買っている。

(2024/7/24 12:00)

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