インタビュー/酉島製作所・小野田孝平氏 技術習得へ貪欲に学ぶ

(2024/8/13 12:00)

酉島製作所で約56年間、大型ポンプの組み立て一筋に腕を磨いてきた小野田孝平氏。海外は30カ国以上を飛び回り、発電所や海水淡水化プラントへの据え付けなど国家プロジェクトに携わってきた。これまでのキャリアや後輩に伝えたいことについて聞いた。

  • 入社から56年間大型ポンプの組み立て一筋

―ポンプの組み立てについて教えて下さい。

「大型ポンプは口径1000ミリメートル以上のもので、一度分解して運び、現地で再度組み上げて据え付ける。重要な作業の一つにシャフトの回転を滑らかにするための技術『キサゲ』がある。軸受への潤滑油の通りをまんべんなくするため、手の感覚を頼りに100分の1ミリメートルの単位で軸受を削っていく。削りが十分でなかったり、削り過ぎたりするとシャフトが傷みポンプの性能を左右するため寸分の狂いも許されない。この部分は自動化が難しく熟練工の技が必要だ」

―55歳から本格的に海外のプロジェクトに携わりました。

「海外工事は想定外のトラブルが発生する。プラントが完成しておらず重機や道具が十分にそろっていない中で40トンのポンプを砂浜で組み上げたこともある。そのような環境下でも自ら試行錯誤し、なんとか顧客の要望に応えることを重要視してきた」

―どのように技術を習得してきましたか。

「クレーン運転士、アーク溶接技能者など10の資格や免許、技能検定を持っている。英語はカセットテープの英語教材を活用し独学で習得した。今も動画投稿サイト『ユーチューブ』で洋楽を聴くようにしている。6人兄弟で学校に通えるお金がなく、高校に通えなかった背景から、貪欲に学ぶ姿勢を大切にしている」

―安全体制の構築に従事してきました。

「入社当時は安全の概念がなく帽子に草履で作業していた。油で滑って死にかけたこともある。そのような時代に安全ベルトやヘルメット、安全靴を現場に導入し安全の基盤をつくってきた。高圧で吸い上げるポンプはボルトが1本緩いだけで大事故につながりかねない危険と隣り合わせの現場だ。安全への意識はこれからも伝えていきたい」

(2024/8/13 12:00)

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