社説/官と民の関わり方③ 公共交通の維持は自治体主導で

(2024/8/20 05:00)

公共交通機関と位置付けられながら、担い手の大半が民間事業者。廃線が続く鉄道はバスへの転換が続く。しかし最後の砦(とりで)と言われたバスもドライバー不足と業績悪化で縮小・撤退が止まらない。民間では手に負えず、自治体が中長期的な地域デザインを持って対策を講じる必要がある。政府も自動運転バスや日本版ライドシェアの全国展開、さらに外資誘致などを推進し、地域活性化を中長期で側面支援してもらいたい。

鉄道は2000年度以降、全国47路線・総距離1275キロメートルが廃線(4月1日時点)。多くはバスへの転換が図られたが、バスも路線維持が厳しい。20―24年の全国の路線バスの累計収支は4000億円の赤字だ。乗客減による採算悪化で賃金が上がらず、運転手不足が慢性化。4月から残業に上限が設けられたことも問題を深刻にする。

人口減が続く中、民間頼みで公共交通機関の維持は困難だ。自治体が主導して地域の姿を中長期に描き、その骨格として公共交通機関を位置付けたい。23年8月に開業した宇都宮市の次世代型路面電車(LRT)は、運行とインフラの維持・管理を官民で担う。沿線にはスポーツ施設を計画し、若者を呼び込むという。土日・祝日利用者は、当初需要予測の2倍以上で推移するという成果を上げている。

政府も自治体を側面支援したい。政府は「レベル4」自動運転バスについて、25年度に全都道府県が運航計画を策定することを目指している。安全・安心を担保する制度設計を詰め、実用化への歩みを進めてほしい。4月に解禁した日本版ライドシェアも、政府は全国に広げる方針だ。タクシー会社以外の参入は当面見送るが、“日本版”の拡大でどこまでドライバー不足を解消できるかも見極めたい。

地域活性化に向け、外資誘致も促したい。円安により工場や研究所の立地条件は改善し、地政学リスクを緩和する拠点分散の需要も期待できる。政府は30年までに対日直接投資残高100兆円の目標を掲げる。地域経済を底上げし、公共交通機関の収益改善につなげていきたい。

(2024/8/20 05:00)

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