インタビュー/トッパンコミュニケーションプロダクツ認定技能士・小川稔氏 「偽造防止 伝統技法つなぐ」

(2024/12/3 12:00)

トッパンコミュニケーションプロダクツ(埼玉県新座市、野島茂樹社長)の小川稔氏はパスポートや商品券などの原版に微細な偽造防止加工を施す製版技術の匠(たくみ)だ。手彫りの彫刻針からソフトウエアへ。ツールは変遷したが、TOPPANの伝統ある偽造防止加工技術を不変につなぐ。

  • 先輩と共同製作した世界一小さい本とともに

―初期の仕事は。

「株券を縁取る唐草模様や風景を印刷原版となる銅版に手彫りで凹版彫刻していた。偽造防止のために入れる図柄で、デザインチームの水彩画を基に線の太さの違いや重なり、強弱に点などを駆使して絵を表現する。完成したら先輩に見せて回り、アドバイスをもらう中で当社の伝統的な手法を習得した」

―2004年の株券不発行制度の公布を契機に偽造防止ソフトの活用が始まりました。

「商品券やパスポート用の現版データに画面上で偽造防止加工を施す。マイクロ文字などの使い方に彫刻のノウハウが生きている。特殊なフィルムを重ねる箇所により異なる絵柄が浮き出るステルス潜像を使った商品券が一番の自信作だ。偽造防止は微細な技術を周囲から浮かずに、いかにフラットに美しく入れられるかが重要だ。最近は絵本やお菓子の箱などに偽造防止を応用したデザインが使われることも多く、活用の幅が広がっている」

―後進の育成は。

「偽造防止ソフトでは優秀な後継者が3人いる。私のノウハウは全て教えた。妥協せずに納得がいくまで頑張るというこの仕事をする上で重要な資質も皆備えている」

―今後、挑戦してみたい仕事は。

「彫刻ソフトを使って紙幣などに採用される肖像を彫ってみたい。私は手彫りの彫刻技術は植物と建物、動物の習得止まり。線でやわらかさを表現する肖像は本当に難しい」

―ギネス記録を樹立した世界一小さい本である0・75ミリメートル角のマイクロブックも先輩と共同製作しました。

「ルーペをのぞき、針2本を使って蛇腹折りにする製本などを担当した。腕が鈍らないよう、自費で断裁機を購入し今も6ミリメートル角などの本を作っている」

(2024/12/3 12:00)

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