指導役に3D骨格データ 富士通、人手不足など社会課題の解決へ

(2024/12/10 17:00)

技能伝承など実証

  • 「へら絞り」で決め手となる腰の使い方を3D骨格モデルで学ぶ

富士通は人の動きを3D(3次元)の骨格データで高精度に解析するプラットフォーム(基盤)「ヒューマン・モーション・アナリティクス(HMA)」を用いて、少子高齢化に伴う人手不足などの社会課題の解決に挑む。これまで体操競技の採点やスポーツ指導でノウハウを積み上げてきたが、今後は国内外の企業や研究機関との連携を拡大し、現場作業でのけがの防止や技能伝承など、モノづくりやへルスケアといった幅広い分野での活用を目指す。

HMAは人の動きに焦点を当てた人工知能(AI)対応のデータ解析・活用基盤で、身体にセンサー群を装着せずにカメラ映像のみで人の動きをリアルタイムに解析できる。従来のスポーツ関連に加え、今後はエルゴノミクス(人間工学)に基づく骨格解析やシミュレーションなどで実績を持つ国内外の企業や研究機関との連携を拡大する。

第1弾としてモーション解析ソフトウエアを提供するカナダのHASモーションや、骨格モデリング「Anybody」を用いたシミュレーションで実績を持つテラバイト(東京都文京区)とパートナー契約を結んだ。これにより、学術研究などの特定用途に限られてきた高度なモーションデータの?普段使い?も可能となる。

  • 3D骨格モデルの動きを見ながら能を学んでいる様子

パートナーの拡大とともにユーザー企業との実証実験も積極化する。北嶋絞製作所(東京都大田区)とは「へら絞り」の技能伝承を実証した。へら絞りの技法をHMAで解析し、腰の使い方を3D骨格モデルで再現するなど、技能伝承に有効なことを確認した。

伝統芸能では能楽師の動きを3D骨格モデルで解析し、骨格ベースの映像を見ながら動きをまね、要領よく学べることを実証した。能楽協会とは今後の活用法を検討していく。

作業現場では重い物を持った際に、関節や筋肉にかかる負荷を骨格ベースで解析。ぎっくり腰になる持ち方をした従業員をカメラで即座に検知し、アラームで注意喚起するなど、労災対策に有効なことも実証した。

富士通はHMAをグローバル展開し、技能伝承や労働寿命の延長を通じて、高齢者や女性など多様な人材が安心して活躍できる社会を目指す。

(2024/12/10 17:00)

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