[ オピニオン ]
(2016/11/21 05:00)
「本音と建前」は日本人を語るうえで欠かせない言葉とされる。米国人の友人は「日本人は本音と建前を使い分けるケースが多いね」と手厳しい。それはほとんどの場合、軽蔑したような言い方だ。
その友人が「今回は我々の中に本音と建前を使い分ける人間が大勢いた」と自嘲気味に言った。米大統領選を話題にした時のことだ。つまり「トランプには投票しない」と言っていながら、彼に投票した人が多かったそうだ。
「メキシコとの国境に壁を作る」「イスラム教徒はこの国から出ていけ」といった国籍、宗教上の差別や女性蔑視の発言を繰り返すトランプ氏に対し「自分はあんな男とは違う」と多くの白人男性は言った。
友人は続ける。「口では『あんな男と違う』と言いながら、心の底では『そうだ。よく言ってくれた』と思っていた人がいたのだ」と。そして「それがまさか大統領に押し上げるほどの勢いを持っていたとは」と嘆いた。
今回の大統領選は誹謗(ひぼう)中傷が飛び交い、政策論争のない史上最低の選挙戦と評される。だが振り返って日本の政治はどうか。TPP(環太平洋連携協定)の議論は閣僚の失言と進退が争点で、中身の議論は皆無に近い。これでは米大統領選と変わらない。
(2016/11/21 05:00)