[ オピニオン ]
(2017/3/21 05:00)
「明日からまた仕事かぁ」と、いささか憂鬱(ゆううつ)な気分になっていた休日の夕方、スマートフォンが震えた。「まいどぉー! 元気かいな?」。明るく自信に満ちた声に、暗い気持ちが一気に飛んだ。
電話の主は中小企業の社長。日本刀と同じ製法で工業用刃物を手がけている。親しくさせて頂いて17年。時おり連絡してきて「こんなんできたでー」「××に詳しい人知らんか?」と、宿題と刺激を与えてくれる貴重な存在だ。
中学卒業後、すぐに職人の道に入った苦労人。とはいえ職人にありがちな寡黙さとは無縁だ。新技術に熱心に取り組み、それまで不可能とされた切断加工を何度も実現。一方で大手企業をアポなしで訪問し、商売につなげる。腕も口も立つ中小企業の“スーパーおやじ”だ。
新聞を開いても、いかに技術を高め、どう応用するかという視点で記事をじっくり読み込む。その後に現場で起きた“切った張った”の話をお聞きすると、記事を書いた自分の取材力と知識のなさを思い知らされて反省せざるを得ない。
今回の電話も、日本の将来が明るくなる新技術の話。しどろもどろで、実のあるお答えができなかった。すでに暗くなった春の空を見上げながら、自らの精進を誓った。
(2017/3/21 05:00)