[ オピニオン ]
(2017/3/20 05:00)
盛唐の李白は、同時代の杜甫とともに漢詩家の至極として並び称される。謹厳実直な作風の杜甫が「詩聖」と評されるのに対して、天衣無縫な李白は「詩仙」。同時に左党の「酒仙」として古今のファンを獲得している。
『山中にて幽人と対酌す』は、そんな作品のひとつ。山の中で世捨て人と酒を酌み交わす。傍らに花が咲く、ちょうど春めいてきた今の時分だ。「一杯一杯復(ま)た一杯」。これを七言絶句の承句にしてしまうのがすごい。
この詩は「我酔うて眠らんと欲す卿(きみ)且(しばら)く去れ/明朝、意あらば琴を抱いて来たれ」と結ぶ。ああ眠くなった、気が向いたら明日も遊ぼうぜ―というわけで、かくも酔っ払いの身勝手をさらけだして通用するのは李白だけであろう。
これとは別に『内(つま)に贈る』では「三百六十日/日日酔うて泥の如し」と詠じる。俺と結婚しても一年中酔いつぶれているから(女人を近づけない)太常職の男の妻みたいだね―というズボラでワガママな詩想。眉をひそめる方も、うーん、分かるなぁという方もいるだろう。
きょうは春分の日。寒さが徐々に遠のき、桜の開花は目前。歓送迎会もこれからが本番だ。酒仙ならぬ身としては、飲み過ぎを慎むことを忘れずにいたい。
(2017/3/20 05:00)