(2022/5/23 05:00)
岸田文雄首相とバイデン米大統領による対面での会談が23日、都内で開かれる。
軍事・経済の両面でインド太平洋地域における存在感を増している中国を念頭に、米国の同地域への本格的な関与を打ち出す。同盟の強化はもとより、インド太平洋地域の経済安全保障を担保する、米国主導の新たな経済圏の発足が同日表明される。新経済圏は台湾海峡有事なども想定し、持続可能なサプライチェーン(供給網)とすることが期待される。
新経済圏「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」は自由、民主主義、人権などの価値観を共有する国・地域が連携し、覇権主義的な行動を強める中国への経済依存を引き下げる。中国は東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)を通じて影響力の拡大を図っており、こうした動きに対抗する。
新経済圏は米国をはじめ日本、豪州、韓国などのほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)にも幅広く参加を呼びかける。デジタル流通、安全で強靱な供給網、質の高いインフラ整備・脱炭素、税・反腐敗の4本柱で構成し、ルール整備や政府間協定を目指すという。
ただ、米国の労働者の反発を見越し、関税引き下げといった貿易自由化は行わない。米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)に代わる次善の策との位置付けになる。米国での事業拡大を狙うASEAN諸国には魅力が乏しく映るが、積極的な参加を期待したい。
これまでの貿易は関税引き下げによる低コスト化が求められたが、今後は台湾有事などによる供給網の寸断を回避し、安定調達できる体制が重要になる。経済安全保障の観点から、貿易の価値観は低コストから安定性に移行していると見るべきだ。
日米首脳会談では次世代半導体の開発・生産での協力強化も議論する。韓国に加え台湾も新経済圏に加われば中国の脅威になるだけに迎え入れたい。
新経済圏の経済効果や参加国数など不透明な部分は少なくない。新たな経済秩序の形成に向けた序章として評価したい。
(2022/5/23 05:00)