産業春秋／牛尾さんはすごい方だった

経済同友会元代表幹事の牛尾治朗さんの追悼シンポジウムが、１７日に都内で開かれた。新浪剛史代表幹事は故人を偲（しの）び「同友会は何をすべきか見直したい」と決意を新たにした。

牛尾さんは６月に９２歳で亡くなった。同友会の活動は６０年を超える。代表幹事を務めた１９９７年に「市場主義宣言」をし、企業家精神によって競争力を持ち、市場経済全体を活性化すべきと唱えた。戦後の行政主導型経済成長からの転換である。

竹中平蔵慶応義塾大学名誉教授は「牛尾さんはすごい方だった」と振り返る。２００１年から０６年まで経済財政諮問会議（首相の諮問機関）の議員となり、銀行国有化などの事態に「司令塔のように人事を動かした」。

しかし、竹中氏は「悪い言い方だが、経済人は政治に対し、８０年代後半からおねだり型になった」と指摘する。バブル期に世界１位となった日本の競争力ランキングは、２３年には３５位と過去最低に落ちている。

宮内義彦終身幹事は「世の中を動かさなければ、同友会はただの勉強会になってしまう」と奮起を促す。「牛尾さんを最後の財界人にしない」と会場に呼びかけ、自ら行動し経済社会に影響を及ぼす財界人が現れることを願った。