(2024/1/18 12:00)
東京大学とTHKが現場で学ぶピッキングロボットを開発している。小売り店舗や工場で商品や部品をピッキングしながら、新しい商品などを人工知能(AI)に学習させる。そのために学習用の作業は極力軽減して現場の負担にならないようにする必要がある。そこで半自動で学習データを作り、AIモデルを更新するシステムを構築した。現場の柔軟性と自動化を両立させる。
「現場ではAIのための仕事はやりたくない。できるだけ自動で処理し、必要な作業はロボットに担わせる」。東大の矢野倉伊織助教はこう説明する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業でオンサイトティーチングシステムを開発する。例えば、店舗にAIの学習用データセットを作る作業を負担させるのは現実的ではない。店舗作業が増え、効率が低下する。ただ取扱品や作業ルールが変わるのは現場だ。現場の柔軟性や流動性にAIが追従する必要があった。そこでAIのための仕事を自動化する。
開発システムは店舗や工場で商品の写真を撮ると、自動で画像から背景を取り除き、別の背景や他の商品と合成したデータを生成して画像認識用AIを構築する。矢野倉助教は「スケールや輝度、彩度などを調整した画像を何通りも作って学習させる」と説明する。2分で10万枚ほどの画像を生成する。
撮影作業はロボットが担う。棚から商品を取り出し、ばんじゅう(運搬容器)の中の商品を多角的に撮影する。ばんじゅうは単色で背景の切り抜きなど画像処理がしやすい。現場でのピッキング作業とも相性がいい。この撮影動作などは人間の所作をまねた。商品確認など、人の注視動作を抽出してAIの模倣学習で撮影動作を生成する。
ロボットは双腕型の機体を設計した。腕の関節にはステッピングモーターを採用。ステッピングモーターは人にぶつかるなど、大きな負荷がかかると回転軸が滑って力を逃がせる。壊れにくい機体は何度も試行錯誤するAI開発に向く。
THKサービスロボット研究所の岩政恒史主務は「双腕のため左右の棚から同時に商品を取り出せる」と説明する。腕が独立して上下に動くため、右腕は高所、左腕は足元の商品を取るなど作業効率が倍になる。片腕はピッキングしながら、もう片腕がAI用に撮影することも可能だ。これをTHKの山形工場(山形県東根市)で実証する。工場内物流は変化が早く、規模も小さいため自動化が難しい。柔軟性と自動化を両立させ、AIロボットの普及を目指す。
(2024/1/18 12:00)
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