SCMでみる“現場の1次情報”、解釈の要否・判断重要に

(2024/2/21 12:00)

  • SCM上の一次情報は現場に最も多く存在するが、その解釈は事業戦略に即して行うことが定石となっている(『ベルリン飛行指令』の表紙。著者撮影)

『ベルリン飛行指令』という佐々木譲の小説がある。第二次世界大戦下の日本から当時の同盟国であるドイツまで零式戦闘機を空輸する架空の極秘任務を描いた物語だ。国家のハイレベルで起案された計画を実行すべくオペレーションに従事する若き2人のパイロットが主人公である。モノはこびの現場において効果の不明瞭な計画を実行する理不尽と、アビエイター(飛行士)としての矜持のはざまで苦悩する姿はサプライチェーン(供給網)の現場を担う人々の姿と重なる。戦略・計画・実行(管理)の階層的意思決定を基本とするサプライチェーン・マネジメント(SCM)の観点より「現場の情報」について考察してみたい。

SCMは需要・供給の不確実性を前提とする意思決定の連鎖だ。この意思決定の前提となる1次情報は需給のオペレーションを担う現場に最も多く存在する。しかし現場の情報は事業戦略に即して大局的に解釈すべきものと捉えるのがSCMの定石である。需要計画を起点とする供給計画上の階層的意思決定(MP&C、本連載第32回)の根幹でもある。その背後にあるのは供給計画の立案を担当する者が計画を実行する現場に対して計画の効果を保証すべきことについての了解だ。

もっとも、平時のSCMはこの限りでない。需要の変化に予見性があり、かつ補充リードタイムなど供給活動の諸要素が把握できている場合、需要情報はそのまま供給計画へのインプットとなり得る。特に流通の現場で把握された需要情報を独立需要とみなして供給活動上の従属需要を直接的に算出する手法を流通所要量計画(DRP=Distribution Requirements Planning)という。もし適用できる状況ならば、見逃せない好機といえるだろう。

従来のグローバル・サプライチェーンにおいて最も多くの1次情報に接していたのは駐在員を含む現地スタッフだ。その立場は冒頭の物語の主人公たちに通じる。現代では機械的に記録された膨大なデータがこれに加わる。現場が捉えた情報が解釈を要するものかどうか、適切な判断を行うための教養としてSCMを学ぶことの重要性がますます高まっている。

◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当

(2024/2/21 12:00)

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