産業春秋／観光業、一難去ってまた一難

一難去ってまた一難と言うには、振幅があまりにも大きい。コロナ禍で廃業も相次いだ観光業界。円安も追い風に訪日客が回復したものの、オーバーツーリズム問題に直面する。

ある市場では観光客でごった返し、地元の人が買い物しづらくなったとの話も。店先が立ち食い場と化して、訪日客だけでなく日本人観光客のマナーにも眉をひそめる。

２０２４年版の観光白書によると、２３年の訪日外国人旅客数は２５０７万人で、１９年の８割程度だった。ただ１人当たりの消費単価は同３１％増えている。訪日客数は、月次では２３年１０月にコロナ禍前を超え、勢いを増している。

観光庁は３月、オーバーツーリズム対策のモデル地区を全国２０地域選定した。観光資源は地域により異なるので、それぞれの実情に沿った計画を策定し、国が支援する。モデル地域は近く拡大される。

訪日客の消費額増加は宿泊日数の増加と円安によるところが大きい。オーバーツーリズム対策では、訪日客向け価格を設けることなどが指摘される。だが行き過ぎた二重価格は日本離れのリスクも。そもそもアジアからの訪日客と日本人、日本国籍を取得した外国人をどう見分けるのだろうか、課題は尽きない。