(2024/7/17 12:00)
日立製作所グループで産業用の電機機器を手がける日立産機システム(東京都千代田区)。その中核工場の一つで、11月に開設50周年を迎える中条事業所(新潟県胎内市)では、国内向けに変圧器や配電機器などを製造する。電力損失の少ないアモルファス(非晶質)合金製の鉄心を採用した変圧器の製造で存在感を増しており、さらに買収する三菱電機の配電用変圧器事業が加わることで、市場をけん引していく。
中条事業所はサッカーグラウンド72面に相当する約52万平方メートルという広大な敷地の中に、大小4棟の建屋が並ぶ。源流となるのは日立製作所の旧亀戸工場(東京都江東区)で、1974年に現在の胎内市に移転した。
中条事業所の藍原和哉所長(事業統括本部配電システム事業部事業部長)は「2023年度の売り上げではこの事業所全体の70%強が変圧器で、ほぼ変圧器の工場」と説明する。
同事業所最大の強みは、鉄心にアモルファス合金を用いた変圧器の製造だ。アモルファス合金製の鉄心は原子配列が不規則で結晶構造をしていないため、一般的なケイ素鋼板鉄心より、待機電力による電力損失が大幅に少ない特徴を持つ。発電所から需要家までの送電では、事業用変圧器からの電力損失の改善が大きな課題になっている。
藍原所長は「カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に貢献する、こういった製品の需要がすごく高まっている」と指摘する。アモルファス合金製変圧器の売り上げは22年度と23年度は前年度比約50%増の勢いで伸びている。24年度も同等の伸びが期待できるという。
アモルファス合金の加工は「とにかく薄くて硬いものをいかに精度良く寸法を出すかが非常に大事で、他社がすぐやろうと思っても難しい」(事業統括本部配電システム事業部の成田茂製造部部長)ため、その技術を長年磨いて確立してきた日立産機システムにとって他社との差別化につながっている。
10月からは同社が買収する三菱電機の名古屋製作所(名古屋市東区)の配電用変圧器事業が段階的に加わる。統合で生産・開発体制を強化することで、同事業所は国内最大級の配電用変圧器の製造拠点になる。
データセンターや半導体製造などで電力需要がますます増大し、CNへの対応も求められる中、藍原所長は「日本国内のマーケットリーダーとして業界をけん引したい」と力を込める。
(2024/7/17 12:00)
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