インタビュー/ブラザー工業取締役専務執行役員・村上泰三氏 調達で「人権リスク」低減活動

(2024/8/8 12:00)

―2024年度までの中期戦略で「サプライヤーに対する人権リスク評価の拡大」を掲げています。これまでの施策と成果は。

「人権方針の策定、人権デューデリジェンス(DD、調査)の実施、人権問題の救済の三つの取り組みを行っている。人権方針はすでに策定し、公開している。人権DDは調査票によるアセスメント(評価)や訪問、オンラインによる監査でリスクを低減する活動を始めた。以前から行っていたが、22年度から1次サプライヤー全てにDDをできるようにした。救済については『ビジネスと人権対話救済機構』に加盟し、通報などがあった時は、この機構を通じて対応する体制をとっている。人権リスクに関する規制は今後、世界各国に広がる見通しだ。その情報を収集しながら、規制の適用範囲や内容を踏まえて、必要に応じて活動内容の修正や拡大を検討していく」

―これまでに人権リスクが大きな事例はありましたか。

「見つかっていない。もちろん何かがあれば是正していく」

―中期戦略では「製品に投入する新規資源率」を81%以下にする目標も打ち出しました。

「具体的な数値に関しては現在、外部監査を受審中だが、81%以下の目標は達成する見込みだ」

  • プリンターなどの製品の部材調達で、サプライヤーに対する人権リスク評価や再生材の導入を推進する

―苦労した点は。

「PCR材(一般消費者が使用した後に再生したプラスチック材料)の活用だ。品質面、コスト面でまだまだ難しいことが多く、思ったよりは進められなかった。プラスチック材料の再生は技術的な課題が多いのが現状。特に必要な品質をクリアできないことが大きい。適用範囲の限界を探っている」

―製造子会社のブラザーインダストリーズ(スロバキア)が作る再生トナーカートリッジが、ドイツの環境ラベル「ブルーエンジェル」の認証を得ました。

「リサイクルにはリユース(再利用)するのが一番効率がいい。認証を取ることでお客さまの信頼を得ながら、資源の有効利用を進めていく」

(2024/8/8 12:00)

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