(2024/10/7 12:00)
人工知能(AI)のデータ処理を端末側で行う「エッジAI」。多くの店舗に設置されている防犯カメラをそのままエッジAIカメラとして転用し、マーケティングや店舗づくりに生かしているのが北海道を地盤にするサッポロドラッグストアー(札幌市東区、富山浩樹社長)だ。長く続いた会員カード情報頼みから脱却し、現在では店舗ごとの正確な入店者数まで分かるようになった。各種のエビデンス(科学的根拠)やデータを取り込んで店づくりに生かす同社が次に目指すものは何か。
「サツドラ」の名称で知られるサッポロドラッグストアーの店舗は、北海道全域でおよそ200。北海道に特化した店舗網を構築している。1972年創業で、同社を中核とするサツドラホールディングス(HD)の2024年5月期の連結売上高は955億円と、1000億円の大台が目前に迫っている。
マーケティングで壁に当たったのは00年代に入ってからだ。例えば購入者の品目。50代主婦の買い物履歴をチェックすると、通常は買わない品が混ざっていることがあった。当時、データは全て会員カードに頼っていた。だが、50代主婦のカードは時に子どもや夫も利用する。正確なデータどころか、分析はかえって混乱した。
流れが変わったのは北海道大学発スタートアップのAWL(アウル、東京都千代田区)と17年に結んだ資本提携。AWLはAIのカメラソリューションを開発しており、サツドラの店舗で実証実験が進められた。
19年に本格導入を開始。サッポロドラッグストアーマーチャンダイジング本部の山本剛司本部長付は「驚いた。ほとんどの店に既に付いている防犯カメラを転用できる上に、映像で見えることが全てなのでデータを疑う余地がなかった」と振り返る。
これまで全体の半分に当たる100店舗にAIカメラを設置。プライバシーの観点から映像は保存していない。「購入結果は販売時点情報管理(POS)データで把握できるが、私たちが知りたいのは購入しなかった客のこと。その理由は何か」(山本本部長付)。未購入の客がどの棚の前にいて、どれほどの時間迷っていたのか。棚に商品を戻した後、どの動線で次の棚に向かったのか。AIカメラが大きなヒントをもたらす。
全国各地から同社のシステムを視察に訪れる人が後を絶たない。空港や鉄道など交通機関の関係者も含めて週2、3社が来訪する。山本本部長付はAIカメラの活用について「販売戦略をベースにして魅力ある店舗づくりを進める」とした上で「防犯にもう一度力を入れる。万引を抑止する売り場づくりを実現したい」と先を見据える。
(2024/10/7 12:00)
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