(2024/10/18 13:45)
配管溶接 技術面も支援
日本の宇宙開発を進める企業の中には、国内だけでなく海外でのビジネスチャンスを見越して欧米に海外拠点を持つケースが増えてきた。海外拠点は研究開発を担っている場合もあり、開発した衛星などの輸送は慎重に行う必要がある。日本航空グループは、国内外での衛星や装置などの輸送や航空分野で宇宙開発に生かせそうな技術を提供してきた。宇宙で活躍する衛星などの輸送や開発には、航空分野の貢献が必要だ。
これまでに、日本航空では多くの衛星などの宇宙機の航空輸送を担ってきた。最近ではispace(アイスペース)が2024年冬に打ち上げ予定の民間月面探査プログラム「HAKUTO―R」ミッション2の月着陸船に搭載する小型月面探査車「テネシアス」の輸送を担当。アイスペースの研究開発拠点があるルクセンブルクから近いフランスの国際空港から日本に自社の航空機を使って空輸で届けた。宇宙機は振動などに対して厳重に作られているが、精密機器も多く搭載しているため慎重に輸送する必要がある。航空機整備を担うJALエンジニアリング(東京都大田区)の秡川宏樹取締役は「今回輸送した探査車は、専用のコンテナに入れて安全に日本まで運んだ」と説明した。
日本航空グループは航空機の安全飛行や発着・点検、部品整備などを長年担っており、航空機に関する技術開発力の高さが強みだ。航空分野には宇宙開発でも活用できる技術が多く、宇宙機などの輸送だけでなく技術開発にも貢献している。JALエンジニアリングはアイスペースと資本業務提携を締結。日本航空のエンジン整備センター(千葉県成田市)にアイスペースの月着陸機を組み立てる設備を作り、HAKUTO―Rミッション1・2で打ち上げる月着陸機の飛行モデル2機を製作した。アイスペースの袴田武史最高経営責任者(CEO)は「さまざまな技術や業種がつながることで効率的に開発が進むことを実感した」と振り返る。
その際に航空分野の整備でカギとなる技術である配管の溶接などをJALエンジニアリングの技術者が支援した。推進系に使う細い配管の溶接を行って、溶接した管同士がつながっていることを非破壊検査で確認し、宇宙機の一部の製造を支えた。日本航空の鈴木隆夫執行役員は「配管の溶接は細かい作業で技術が必要。整備などで培った技術が宇宙開発で生かせた」と振り返る。
日本航空といえば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の元宇宙飛行士である若田光一さんがJAXAに入構する前に航空機の整備士として働いていた企業だ。若田さんは「宇宙開発には人材とサプライチェーン(供給網)が重要。技術継承しつつ、さまざまな分野と進めることで市場拡大につながる」と強調する。航空と宇宙開発は近い分野だが共創していない部分もあり、お互いの技術を持ち合うことでより先端的な技術の開発につながると期待される。
(2024/10/18 13:45)
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