産業春秋／規格外ココナツが拓く航空の未来

ＳＦの世界に、また現実が近づく。食用に適さないココナツが持続可能な航空燃料（ＳＡＦ）になる。新エネルギー・産業技術総合開発機構（ＮＥＤＯ）の植物由来ＳＡＦに関する事業から生まれた。

１９８５年に公開された映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」。自動車を改良したタイムマシンが、落雷をエネルギーに現代へ戻る。映画のエンディングでは未来の技術革新により、ココナツならぬゴミを燃料に時空のかなたに飛んでいく。

ココナツは世界で年間７０００万－１億トン生産される。だが未成熟、芽が出ている、割れている、腐っているなどで、３割が食用に適さない。この規格外のものを原料にＳＡＦを製造した。

規格外品は乾燥し、圧搾してオイルを抽出。日本グリーン電力開発、東京農工大学、ハイケムが共同開発の触媒を用いてＳＡＦにした。ココナツオイル１００％のバイオマス由来ＳＡＦの製造は世界初。

ＳＡＦは航空燃料に混合して使うことで二酸化炭素（ＣＯ２）の排出を抑制できる。今回、原料調達ではインドネシア政府の協力を得ており、サプライチェーン（供給網）構築の道筋もできた。航空の未来へとつながる今後の実用化が注目される。