(2024/11/1 17:50)
使い方学ぶきっかけに
NTT東日本とNTT西日本の協力を受けタカラトミーアーツ(東京都葛飾区、近藤歳久社長)が手がけるミニチュアサイズの「公衆電話ガチャコレクション」が人気を集めている。2019年の発売以降、シリーズ累計290万個を突破。9月には第4弾となる番外編を投入した。街角から姿を消しつつある公衆電話に愛着を持つ40代以降だけでなく、利用経験がない若い世代が使い方を学ぶきっかけとなる効果を生み出している。
「当社が17年末に行った調査で公衆電話の利用経験がない小学生が約85%に達した。災害時に備えた利用啓発をしたかった」。NTT東デジタルオペレーション部の小野塚達也公衆電話サービス担当課長は、18年夏にタカラトミーアーツへ商品化を提案した経緯をこう振り返る。
NTT東は小学生向けに公衆電話の使い方を学ぶ教室を開催している。そこでチラシやクリアファイルを配布していたが、継続利用する児童は少なく「子どもたちが喜ぶモノを作りたかった」(小野塚課長)。その時に小野塚課長の上司が郵便ポストや信号機のミニチュアを紹介。「街角公共物シリーズ」として、これらをガチャで販売していたタカラトミーアーツの顧客相談窓口に電話した。
タカラトミーアーツで街角公共物シリーズを手がけるガチャ事業本部企画2課の加藤しずえ課長が、この電話の存在を知ったのは半年後の18年冬。信号機に続く街角公共物のネタを探していた加藤課長だが、設置台数が減り続けている公衆電話の商品化に当時は不安を感じた。300円という低価格で販売するガチャは生産数を大きくしなければならず一定の売り上げが求められるからだ。
その頃、ソフトバンクの携帯電話網で大規模通信障害が発生。一部の公衆電話に行列ができた。加藤課長は「私自身が最後に公衆電話を使ったのが11年の東日本大震災だった。公衆電話ガチャが災害時の利用啓発につながると感じた」と商品化の理由を説明する。
ミニチュアの公衆電話は受話器の上げ下げができ、お釣りの受け取り口が開く。「受話器を上げて硬貨を入れ番号を押すことを学べるようにしたかった」(加藤課長)からだ。公衆電話の使い方を記した説明書も入れた。
公衆電話の色合いの再現にもこだわった。緑色やグレーの公衆電話機は現在も稼働中で貸し出せない。「真夏の公衆電話ボックスに約4時間こもって色見本帳を持ちながら採寸作業を重ねた」(同)。番外編で投入したピンクの電話は劣化した色合いを出すことに苦労したが、当時を知るNTT東社員に色見本を見せるなどして本物と違和感のない色合いも実現。通常、企業コラボガチャの購入者の約7割が20―30代の女性だが、男女問わず幅広い年代が購入する人気シリーズになった。
今後の展開について加藤課長は、固定電話関連アイテムのさらなる商品化に期待する。黄色い表紙の電話帳「タウンページ」は26年3月に廃止となるが、電話帳や黒電話など“昭和レトロ製品”のガチャ化で若者の認知度向上に一役買うことになりそうだ。
(2024/11/1 17:50)
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