産業春秋/肥料は「食料安保」と「円安対策」に

(2024/7/8 05:00)

農作物を育てるには水、光、空気、ミネラル(肥料)が必須。その肥料は食料安全保障と環境問題の観点で重要となる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、そんな報告書を公表した。

水に恵まれ、四季折々に日差しがあり、きれいな空気の日本。農作物生育の3条件は満たしているが、肥料は自給できない。原料であるリン酸アンモニウムや塩化カリウム、尿素は大半を輸入に頼っている。

では輸出しているのはどこか。肥料輸出国トップ10ではロシアが1位で200億ドル超、中国が3位で110億ドル超に上る。中国は農産物生産額でも世界1位だ。

欧州などでは、海藻(かいそう)や微生物などバイオ系肥料の研究開発が進む。化学肥料を減らし環境対応を進めるとともに、特定国依存のリスクを軽減するものだ。併せて、製造時に二酸化炭素(CO2)の排出が少ない低炭素窒素系肥料の開発も進んでいる。

日本では近年、生産性や品質向上に向け、スマート農業への取り組みが広がる。バイオ系の土壌改良材をビジネスにするスタートアップも登場している。肥料は38%にとどまる食料自給率(2022年)を向上させるカギを握り、円安対策にもつながると期待したい。

(2024/7/8 05:00)

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