鈴木商館、あいまいな商習慣変革 価格転嫁、対価をまず現場に

(2024/7/18 12:00)

  • 製造業や医療機関を陰ながら支える(高圧ガス充填工場)

鈴木商館はサプライチェーン(供給網)上不可欠な高圧ガス専門商社として、事業のサステナビリティー(持続可能性)を追求する。溶接や半導体、食品など産業ガスのほか、医療ガスも取り扱う。

鈴木慶彦社長は「社会に必要とされる仕事には高いお金を払えるような社会の流れになるべきだ」と力説する。物価高に負けない持続的な賃上げは日本全体のノルム(社会通念)になりつつある。

同社は2022、23、24年と3年連続で賃上げを実施する。3年間で最大3万円の上昇となる。鈴木社長は「現場で働く人たちから順番に上げている。増える労務費はどうするのかと言えば、お客さんからもらう」と価格転嫁の交渉を同時に進める。

日本経済が約30年苦しんだデフレからの完全脱却には、賃金と物価の好循環がカギを握る。産業界を陰ながら支える同社は原材料高やエネルギー・労務費上昇分の転嫁以外に、従来契約上あいまいだった業界の商習慣を変えようとしている。

配達員がガス容器などを顧客の設置場所まで運び、据え付け作業まで行うケースもあったという。ただ、全てがガス代金に含まれ、内訳は不明瞭だった。「(物流の)24年問題もあり、人手を確保するために給料を上げたら運賃も上がる。サービスに正当な対価を求めて契約を見直さなければならない」と鈴木社長は決意を新たにする。

物流危機に対応すべく、同業他社に共同配送を呼びかける。「配送量を増やして効率を上げれば、給料や設備投資に回せる」と業界全体の持続可能性にも気を配る。

(2024/7/18 12:00)

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