(2024/11/25 12:00)
水道管製造で国内首位のクボタは人工知能(AI)を活用し、地震など災害の影響による断水戸数を予測するサービスを2025年4月に開始する。従来の方法と比べ、水道管の更新計画の策定時間を大幅に短縮し、現場の担い手不足が深刻な水道事業体の負担を軽減できる。地震や豪雨など災害リスクが高まる中、喫緊の課題であるインフラの老朽化対策でAIの活躍の場が広がっている。
「途中まで耐震化できていたが、(集落につながる)重要な管路などで耐震化できておらず断水の被害が大きくなったと聞いた」と、クボタの岸正蔵パイプネットワーク技術部長は1月の能登半島地震の被害について説明する。自然災害が激甚化する中にあって、生命線となる水道管の耐震化は急務。しかし、設備更新に時間がかかるのも事実だ。
その大きな原因は、更新する箇所の優先順位をどう付けるかの難しさにある。現在は地震による被害予測や漏水事故率の算出を外部のコンサルタントに委託するのが一般的。地図上で250メートル四方のエリアを評価するものの、「具体的にどこの管路が本当に危ないのかが分からない」(岸部長)のが実情だ。そのため自治体をはじめとする水道事業体では、評価されたデータを基に実際に道路を掘削して診断するなどしており、更新計画策定に1年を要する場合もあるという。
クボタの新サービスの狙いは、この更新計画策定の効率化だ。同社の管種や継ぎ手のデータ、過去の事故履歴、国が公表する地盤データを機械学習したAIモデルを構築。同モデルに水道事業体が持つ管路のマッピングデータを読み込ませ、老朽化に伴う漏水事故率や地震が起きた際の断水戸数などの被害予測を自動で算出する。
さらに避難所や病院といった重要施設に接続する管路や、水流を勘案し、更新の優先順位付けを可能とした。「一番効果のあるところから絞り込みができることはメリットが大きい」と岸部長は強調する。順位付けができれば、更新工事の迅速化にもつながる。
国土交通省が1日に公表した全国の上下水道緊急点検の結果によると、避難所や病院など重要施設に接続する水道管路の耐震化率は全国平均で39%にとどまる。4月に水道整備・管理の所管が厚生労働省から国交省に移管され、上下水道の所管が一本化された。「上水道に対しても大きい予算が付けられるため(耐震化などの施策がより進むことを)期待している」と、吉岡栄司取締役専務執行役員は話す。
(2024/11/25 12:00)
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