(2024/3/4 12:00)
1936年創業の老舗ゴム部品メーカーである錦城護謨(大阪府八尾市、太田泰造社長)は、中小企業向けの目視検査自動化システムに参入した。人工知能(AI)に強いスタートアップと共同で、ゴム部品では難しいとされた自動検査システムを開発、発売した。導入コストを100万円前後と抑え、「人手不足に悩む中小企業のデジタル変革(DX)を後押ししたい」(太田社長)と思いを込める。
開発したのは、カメラで撮影した検査対象物の画像を基にAIが黒点と黒線の異物を判別するシステム。約0・05平方ミリメートル以上の異物混入を判別できる。対象物の大きさによってカメラの台数を増やすなどカスタマイズも可能。錦城護謨のベルト型のゴム製品の品質検査で使用したところ、目視で30秒ほどかかっていた検査が6秒に短縮。1カ月当たりの検査時間を従来より80%削減した。
同社は年間5000種類ものゴム部品を製造し目視で全数検査している。工場では人員の約3割が検査に携わる。ただ、目視検査は集中力が必要。体調などの理由で検品率が下がるといった、精度のバラつきが課題だった。これらは同業他社でも共通するという。
一方、ゴム部品は伸び縮みし画一的な形状ではないことから、一般的な自動検査装置では対応できなかった。今回の開発ではAIによる検査自動化などを手がけるフツパー(大阪市淀川区)と組んだ。錦城護謨が目視検査で積み重ねたノウハウをフツパーの技術に取り込み、ゴム部品に対応できる汎用的なAIモデルを構築した。
自動化の範囲は、あえて品質検査の全項目まで広げなかった。生産量が多く、かつ不良品率が高い検査項目に絞って開発。カメラのスペックも抑えて低価格な機種を選定したことで、数百万円以上が一般的な汎用自動検査装置と比べて大幅に低コスト化。月額約3万円のサブスクリプション(定額制)での提供も想定する。
「中小企業が気軽にAIを導入するきっかけとなってほしい」と太田社長。現行モデルを起点に同業他社のほかプラスチックなどへの水平展開も目指す。
(2024/3/4 12:00)
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